手を伸ばせば、伸ばすほど遠ざかる。
こころは悲しいぐらい遠くまで行けるのに、からだがついてかない。
わかってる、ありがとう。
脈絡のない言葉ばかりがするり、するり、通りすぎる。
それは止めることができない。
コトリンゴさんの『おいでよ』きいたら涙がでる。
わたしはスピーカーに頭を寄せて、じっ…と耳をすませる。
うたにかじりつく。
目をつむり、両手をまぶたにあてると見える黒い世界。
しばらく見てると銀河がいくつも通りすぎる。
暗闇とはちがう、こんなに近くの宇宙。
わたしの宇宙を通りすぎるのは、今はいないいとしい人々。
どうしてもう会うことができないんだろう?あんなに生きて、息をして、同じものを食べて、水を飲み、喧嘩しても夜は眠って、朝は起きて仲直りしたりして、一緒に珈琲を飲んだりして笑ったりしていたのに。
もう二度と会えないいとしい人々。
もうどこにも行かないで。
さようなら、ありがとう。
床が涙でミズタマリ、わたしの黒い髪がしっとりからまり、浮かぶ。
少しスッキリしてカモミールティーがぶ飲みして、梅干し食べる。
コトリンゴさんは歌い続ける。
空は夏色。
わたしは絵を描く。
ただ、描きたくて。
なんにもならない、それでいい、それがいい。
妹に『色塗ったよ!』って見せたら、『姉、オントシ25歳、特技お絵描き』って言われた!(笑)
ラーメン作ってもらい、汗だくで食べ、ベランダの風にあたる。
そよそよ涼しい、汗が冷えて肌に心地よい。
わたしの大切な人たち、それと大きな世界、今日も息をしてくれてありがとう、ありがとう。
佐藤寛子